ときに痛く、面白すぎる

こちらもずいぶん時間が空いてしまいました……。

書くネタはあるのにね(^。^;)

今日は、私の大好きな漫画のひとつ、

羽海野チカさんの『3月のライオン』の話を。

羽海野チカさんと言えば、代表作は

アニメにもドラマにも映画にもなった

『ハチミツとクローバー』。

芸大生の青春話だけでなく、

若手が作品を生み出すことについても

その気持ちが丁寧に描かれてあって、

普通の青春物語とは明らかに一線を画していた。

これが彼女のメジャーデビュー作で、

そもそもはソニーマガジンズという出版社で描いていたのが

漫画誌自体、廃刊になってしまい、

集英社で拾われて続きから描くことになって……という経緯があった。

しかもどうやら、羽海野さんは元々はオタク系……同人誌出身、

その世界では昔から有名だった方らしい。

年齢はたぶん、私より上のはず。

『ハチクロ』は漫画誌での連載からすでに私、

リアルタイムで読んでいたので、

もー、よくぞ集英社、この人を連れてきてくれました!

と思えた。最初から、羽海野さんは何か、ずば抜けてた。

なのにご本人は『ハチクロ』がこんなに売れるとは

まったく思っていなかったそうだ。

と、まあ、そんな経歴があるのに。

少女誌で十分通用する力を持ちながら、

次作で彼女が選んだのは、将棋のプロ、棋士の世界だった。

主人公は幼い頃に事故で家族を失い、

引っ込み思案すぎて友達も作れないイジメられっ子、

それゆえに、将棋にしがみつくことでしか

自分の居場所を作れず、結果的に将棋にのめり込み続けて、

中学でプロデビューを果たしてしまった孤独な男の子……。

たぶんこの設定からして、集英社の漫画誌では

合う枠がなかったのだろう、子会社の白泉社の

『ヤングアニマル』という雑誌で連載が始まった。

その後、主人公は知り合いになったある家族との交流をキッカケに、

高校生になってから自分自身を見つめ直し始め、

いろいろ、もがきながら不器用に日々を生きていく……。

将棋というあの、勝ち負けのみの世界って、実際、

ものすごく厳しいみたいだし、

主人公のキャラも地味で苦しい。正直、最初は

なぜこんな男の子を? とビックリしたが、

そこはさすが羽海野さん、心と気持ちの描き方が半端ないのだ。

痛い、切ない、温かい、柔らかい、小さい、広い、

キツイ、優しい、弱い、強い。

人というものを、あらゆる角度から描きまくってくれる。

だから皆さま、誤解なきように。

究極の一手を目指すような、冒険友情スポ根みたいな、

わかりやすい漫画では、一切ない。

もちろん、主人公は勝つために努力するけれど、

なぜそうするのか、してしまうのか、という根っこのほうが、

ずっとずっと大事に描かれている。

将棋の棋士、という設定も、ああ、そのためだったのだな、と、

読んでいくうちにわかってくるのだ。

『ハチクロ』は恋愛も絡んでいたから、全体に甘酸っぱく、

羽海野さんのカワイイ絵柄にも合っていたけれど、

この『ライオン』は、絵柄からは想像できない、人と人との物語。

しかもその展開は、ときに痛いほど強い、説得力があるのだ。

たとえば、子どものイジメ。

イジメられた人、イジメる人、それぞれの思い。

対応する先生たち、家族たちの思い。周囲の友達の気持ちもある。

人を見守るということ、助けるということ。

自分の弱さを知り、歯ぎしりすること……。

そしてまた、将棋という、勝つか負けるかしかない世界での人間造形。

もう毎回、新しい巻が出るたびに、

読んで「うおっ」って声が出る(笑)

うならされる場面がいくつもキッチリ作ってあって、

しかもときどき、我が身を振り返らされたりもする。

細かい笑いやキャッチーな表現も丁寧に詰め込んであるし、

新刊を読み終わるたびに、今回もやられた……と思えるのだ。

羽海野さんという方は、間違いなく、描くことに全人生を

つぎ込むくらいの勢いでのめり込まれていて、

きっと(申し訳ないけれど)人付き合いは

かなりかなり、苦手な方だろうと思える。

ご本人もあとがきで、自分は『ネガティブエンジン搭載してる』と

おっしゃっているので、性格は暗いほうだろうし……。

でも、だからこそ、この話が描けるのだと思う。

そういうある種、特化している天才が、常人には無理な

ハイレベル修行のように、描くことへ挑戦されているのだと。

戦うことが好きな人にも、暗い過去を持つ人にも、

愛情って何なのだろうと思う人にも、

優しい人にも、苦しい人にも、温かい人にも、

どこかがそれぞれ響くであろうストーリーとキャラクター。

8巻なんて、リタイア世代のおじいちゃんにも読んでほしい(笑)

バリバリに共感できるよ、きっと(´▽`)

今の段階、私の中で『手抜きの一切ない、

濃さが半端ない漫画No.1』はこの『3月のライオン』なのである。

ああ、長々と、あまり具体性もないね(笑)

印象論ばかりですみません(^。^;)

内容についてあれこれ述べるより、実際に

読んでもらったほうが、私の言ってる意味が

おわかりいただけると思う。

ホント、単純にストーリーがどうこう、を超えてる漫画なのだ(笑)

現在、9巻まで。またアフィリなしで、リンク張っておきますね。

あ、9巻でうならされた場面のひとつだけ、紹介しておこうかな。

誰が、誰に向かって言ったセリフかは、あえて秘密にします……。

でも主人公は絡んでない場面なんだよ! なのにこれです。

  ↓

お前は多分 今
不安で不安で
しょうがないんだな

何もやった事が無いから
まだ自分の 大きさすら 解らねえ…

不安の原因はソコだ

お前が何にも がんばれないのは
自分の 大きさを知って
ガッカリするのが こわいからだ

だが

ガッカリしても 大丈夫だ

「自分の大きさ」が 解ったら
「何をしたらいいか」が やっと解る

自分のことが 解ってくれば
「やりたい事」も
だんだんぼんやり 見えてくる

そうすれば…

今の その
「ものすごい不安」からだけは
抜け出る事が 出来るよ

それだけは

俺が 保証する

3gathu_lion_1
3月のライオン 第1巻
白泉社刊 ¥490

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