「美味しんぼ」の、福島の鼻血問題に関する内容が話題を呼んでいて、
それについて賛否の意見がいろいろ出されている。
私は、「美味しんぼ」の内容そのものが
嘘だとか本当だとか『判断できる』立場にはない。
公的に是非を言える専門家でも何でもないから。
でもその表現方法について、一個人として意義と異議、
両方を唱えたいと思う。別にマスコミに関わっていたからではなく、
自分が「気持ち悪い」ので、書くことで整理しておきたいのだ。
長くなるけれどお付き合いよろしくです。
私が読んでいて、現在、自分の気持ちにいちばん近いな、と思うのが
The Huffington Post Japan というジャーナルサイトに掲載された
映画監督・舩橋 淳さんの意見。まずそれを挙げておく。
◎HuffPostJapan 2014年05月13日 舩橋 淳
「美味しんぼ」の鼻血問題:敵を見誤ってはいけない
モバイル系で、上記記事がうまく表示できない方はこちらからどうぞ
→ http://m.huffpost.com/jp/entry/5313031/
今回の記事に関わらず「美味しんぼ」はときどき、
現地取材の「生情報」を加えたストーリーを展開する。
上記で監督もおっしゃっているように、
それは「ドキュメンタリー」と呼ばれる一種の「報道」、
ジャーナリズムであろう。
そして今回のように、現地に関する情報の提供、
およびそれによる問題提起、という
ドキュメンタリー形式を、とるのであれば。
「大勢の人が」という前町長の発言を
そのまま掲載するのではなく、その「大勢」についての
情報も明確にすべきではないのだろうか。
鼻血問題が起きた、その次の回の連載では、こんな記述もある。
「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む
住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、
放射線だけの影響と断定はできませんが、
眼や呼吸器系の症状が出ています」
「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が
約800人もあったのです」
ある医師の言葉。これはまだマシだった、数値があっただけ。
大阪は抗議文を発表した、そして雁屋氏に実際、
取材を受けたその医師の方は、
さらに中日新聞の取材で「マンガの記載は事実」と
おっしゃっている。つまり問題提議、である。
さあ、では「事実」はどうなのか。
追跡調査せざるを得なくなっていくと思われる。
◎つなごう医療 中日メディカルサイト
「美味しんぼ」登場の医師「すべて事実。抗議は被災者に失礼」
→ http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140513073049244
ただし、ここに載っているのはガレキの話ではなく、
福島県在住の方たちの、体調不良の話。
中日新聞が、ガレキの話を避けたのかもしれない。
私は「個人的に」は、国が隠蔽していることがたくさんある、
と、はっきり疑っている。
だからここからはあくまで自分だけの感覚で言えば、になるが
「美味しんぼ」の内容が風評被害であるとは、実は思っていない。
前町長がマンガ内で主張されている
「福島県は住める場所ではなくなった」という発言は、
誠に申し訳ないが、全地域でないにせよ、
ある一定の真実は突いていると思える。
だって除染したところで、山から汚染水は流れてきているから。
山の木が当時から、そして今後も汚染されつつあり、
その葉が毎年、落葉し、土に還っている。
除染が済んだ地面で、その後またすぐに
汚染が見つかっている場所があるというのも、それゆえに、事実だと思う。
汚染の程度が地域によって違うとはいえ、
汚染は「確かに」されていて、その水をせめて「海になるべく流入させない」、
そこに除染作業の意味はある、と、作業に当たる人が
おっしゃっている様子も描かれていて、そうなのだろうと思う。
そして除染作業に従事する方が、だんだん、
疲労感が抜けにくくなる、という描写もあった。
うん、確かに、それは「延々と続く作業に気落ち」するせい、
だけでないかもしれない。そういう影響が出る人「も」、
いるかもしれない、と、私には思える。
福島原発の爆発前、東京電力が圧力を抜くためのベントを開け、
「爆破前すでに」大量の放射性物質が「一気に」放出され、
そのとき、付近の地域の放射線量がかなり高くなったことも、
当時の報道で、すでに情報が流れていた。
マンガにはない話だが、さらに言えば東京電力の故・吉田所長が、
当時、東電上層部の指示を無視して海水を流入させなければ、
もっとひどい事態になっていたであろう、ということも、
複数の科学者が述べているから、事実なのだろうと思える。
それでも、なお。そう、なお、である。
現段階では、悲しいかな、すべて「原因が特定」できない話なのだ。
であれば、今回の「マンガ」という、広く手軽に読まれる手法で
「大勢」と発言するのなら、その根拠を
推測であったとしても、もっと示すべきたっだと思う。
最初に挙げた記事の映画監督は以前、
福島のドキュメンタリー映画を製作された際、
体毛や髪が抜ける方、に、撮影中、出会われた。
そこで「それをそのまま事実として」映像に撮られた。
そこ、なのだと思う。
監督はそのとき「他にもたくさんいるだろう」とは
おっしゃっていない。「これが今の福島の、
ある一人の方の現実である」と、その方の「姿」を、撮影されたのだ。
大勢、という言葉が「どれほどの憶測」を生むか。
100人をもって「大勢」と言っているのか。1000人? 5000人? 1万人?
福島県に住んでおられる「鼻血の出ていない方」が怒るのも、
その点だろうと。
「○○は、なんと△△△だった!」
という見出しをつけておきながら、記事内では「△△△か!?」と
推測レベルに貶める。駅スタンド売り系のタブロイド紙、
名前を例に出して悪いけれど『夕刊フジ』などがよくやる
「煽り(あおり)」の手法だ。
雁屋氏の今回の表現手法は、報道というよりこの「煽り」に近いと、
私には思える。そしてそれは、ドキュメンタリーではないように思うし、
ただ単純に「問題意識を高めて欲しかった」
「表現の自由」というのなら、無責任なやり方だと感じる。
とくに子どもや老人を中心とした『命』に関わる内容なのだ。
煽っていい話、なのか?
これについては以前、それこそ震災直後の福島県に入って
ボランティアを始められた「てんつくマン」こと、
軌保博光さんたちが当時、流されていた情報に対しても思った。
飯館村に震災5日後に入られたことは、当時、本気ですごいと思えた。
その際、放射線量を測るガイガーカウンターが
危険警告音を鳴らしっぱなしになり、
そのことを即、Twitterで流されたのだ。
リツイート(繰り返し)されまくる「危険! 逃げろ!」的な情報。
だがしかし、この「興奮した状態の声」を聞いて、
自分が今いる地域をガイガーカウンターで測ることもできない、
かつ、道路が寸断され、じゃあもしかしたら
非難する「場所そのもの」が汚染されているかもしれない、と
不安を抱き、救助も援助もまだまだの状態だった
東北のほかの地域の方たちは、あのときいったい、
どこへ逃げればよかったのだ?
飯館村の人たち、ガイガーで実際に測って、
「早く離れろ」とてんつくマンさんたちが直接、
住民の方たちに「声をかけた」ことは、すごくよかったのだと思う
(実際にはすでに大量の放射線のなかで過ごされたあとであったが
それでも、なお、一刻も早く、であったと思う)。
でもそれを皆がリツイートして、他の地域をも「煽る」状態になったとき、
現地の人たちは「いったい、どうしろと!?」という
怒りと不安に見舞われてしまわれたのではないだろうか。
強いて言えば当時さえ、皆で怒り、煽るべきは
「国の対応」について、だったのだと。
興奮状態で扇動しても、決して「よい結果」につながるとは
限らないのだと、私には思えるのである。
実際に体調不良になられており、国や自治体に対する怒りを
今、抱えておられる方からは、何様、と、言われかねない、
これがそういう意見であることは、私も承知している。
でも、命に関わる問題を、憶測でなおかつ、
煽りにもつがなうる手法で訴えるのは
やはり、私には「違う」と思える。
その「扇動的」手法に「してやったり」的な満足感は、
一切、含まれていないのだろうか?
人のため、という「英雄行為」的な満足感は、
長さで表せば「1mmたりとも」入っていないのだろうか?
「ドキュメンタリー」であるのならば、できれば舩橋 淳監督のように
「こういう事実が目の前にある」という、冷静で(ある意味、冷徹で)
客観的な問題提起の形であってほしいと。
そうした姿勢であられるな、と私が思えた記事を最後に2つ、
掲載しておく。マスコミ報道と、個人の方の記事である。
◎東京新聞、のちに中日新聞にも出た、記事の切り抜き。
2011年と少し古いけれど、6月16日(東京新聞)22日(中日新聞)。
画像は中日新聞版。
PCなら全面・拡大表示にすれば、最後まで読めるかと。
子どもの鼻血・・・放射線被害では?
→ http://c3plamo.slyip.com/blog/images/chuniti110622.gif
◎ブログ「カレイドスコープ」
個人ブロガーの方だが、思考が偏っているとはいえ
その指摘が冷静で的確な面も多く、ときどき頷かされる。
内容をまとめる力もお持ちで、よく勉強していらっしゃるな、という印象。
ゆえに今回、掲載してみる。2014年4月21日の記事。
途中と最後には煽りでイヤミな文章が少し入っているが、
せめてブログという手法の範囲でこの程度、にとどめてほしい……
という例示も兼ねてご紹介(あ、この方の出される情報に、
私がいつも全面賛成しているわけではないので
その点は誤解なきよう(^o^;)お願いします)。
「子供の甲状腺の検査はするな!」露骨さ増す国策の陰で
→ http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-2776.html
ふー。長くてすみません。熱くならないようにしなくちゃね、私も。
情報を「広く」探し、拾って、自分でいろいろ検討する力って、
これからますます、必要になるな……。